はけの森美術館の正面から続く
遊歩道の入口に建つ「はけの小路」の石碑。
石畳の道に沿って流れるせせらぎは、
途中から暗渠(あんきょ)となり野川へと注いでいます。
今回は、メアリー・ノートンの著書『床下の小人たち』を原作とし、2010年に公開されて大ヒットとなったスタジオジブリの名作『借りぐらしのアリエッティ』です。人間に見られてはいけないという掟の下、古い屋敷の床下で人間の生活品を「借り」ながら密かに慎ましく暮らす14歳の小人の少女・アリエッティと人間の少年・翔との心の交流を描いた感動作で、小金井市の「はけの小路」が大いに参考にされた場所として作中で登場しています。
〝はけ〟とは、国分寺崖線と呼ばれる高低差15~20mの東西に走る崖のことです。「はけの森美術館」に続く遊歩道として整備された「はけの小路」には、美術館の庭園より湧き出る湧水が流れ、竹垣に囲まれ風情のある場所として地域住民の散歩コースとして親しまれています。この湧水は東京名湧水57選にも選ばれています。
作中で「はけの小路」はクライマックスのシーンで登場し、アリエッティが翔と別れを告げ、家族や仲間と一緒にやかんの船に乗って出発する印象深い場面となっています。両岸に石が連なる水路はまさに「はけの小路」の水路と重なります。また小路の竹垣もアリエッティが翔と最後に会話するシーンで登場します。
アリエッティが翔に別れを告げるシーンのモデルとなった「はけの小路」
アリエッティがやかんの船で出発するシーンの参考となった「せせらぎ」
場 所
小金井市中町一丁目周辺
アクセス
・JR中央線「武蔵小金井駅」南口より徒歩約15分
・武蔵小金井駅南口発CoCoバスミニ 野川・七軒家循環「はけの森美術館」下車徒歩約1分
作品概要
2010年に公開されたスタジオジブリ制作のアニメーション映画。人間に存在を知られてはいけない小人の少女と人間の少年との心の交流を描く感動作として大ヒットし、2010年度興行収入では邦画第1位となりました。2011年の「日本アカデミー賞」では、最優秀アニメーション作品賞を受賞するなど国内外で評価の高いスタジオジブリ作品の1つ。
中倉隆道(Nakakura Ryudo)
元NHKアナウンサーでフリーになるとともにアニメ好きが高じて「アニメ研究家」として活動をスタート。年間300作品あまりのアニメを視聴研究しているアニメ研究家。テレビやラジオなどのメディアでアニメに関する論評や『映像』『構成ストーリー』『音楽』など独自の目線での解説、アニメ番組やイベントの司会等も行っている。