東京には謎めいた魅惑のスポットが多くあります。招き猫がたくさん並ぶ豪徳寺もそのひとつでしょう。外国人にも大人気の寺院を目指して、今回は全長約5㎞の世田谷線沿線を進みます。途中、寄り道をするので、約6,5㎞のトリップです。
スタートは京王線も乗り入れている下高井戸駅の東口。すぐに世田谷線の線路をまっすぐ眺められる場所に到着します。民家の隙間を縫うように走る2両編成の電車はかわいらしく感じますね。しかも走行する10本の車両はラッピングがすべて異なっており、なかでも人気を集めているのが「幸福の招き猫電車」です。残念ながらシャッターチャンスを逃してしまいましたが、目撃したときはうれしい気持ちになりました。
雰囲気の良い豪徳寺商店街を通って、宮の坂駅前を左に入ると豪徳寺です。1480年に弘徳院として建立され、1633年に再興。彦根藩主であった井伊家の江戸菩提寺と定められ、1659年に豪徳寺と改称されました。
こちらは「招福猫児(まねきねこ)」が有名ですね。この地を通りかかった鷹狩り帰りの殿様(井伊直孝)が、お寺の門前にいた猫に手招きされ、立ち寄ったことで、突然の雷雨を避けられたという話が伝えられています。招福猫児を祀る招福殿には開運招福などを願うたくさんの参詣者が訪れており、〝圧巻の光景〟を眺めることができますよ。
豪徳寺の隣にある世田谷城阯公園にも寄っていきましょう。深い緑のなかに土塁と堀があり、秋は紅葉も楽しめます。
城山通りを進み、上町駅の踏み切りを渡ったら、世田谷通りを左に。世田谷区役所入口も左折して、松陰神社へ。境内には幕末の教育者であり思想家、吉田松陰の墓碑や像、松下村塾の模造があり、歴史好きにはたまりません。
松陰神社前駅から世田谷線沿線に戻り、ゴールの三軒茶屋駅を目指します。若林駅、西太子堂駅の横を通って、五色不動のひとつ目青不動尊(最勝寺)の前を過ぎれば、フィニッシュです。
全部で10駅ある世田谷線。全区間の乗車時間は17~18分になります。今回のコースは歩いて、観光して2時間ほど。ゴール後は人気店の多い三軒茶屋で美味しい食事を満喫してもいいですし、電車で下高井戸まで戻り、本日のプチ旅行を振り返るのも楽しいですよ。
下高井戸駅
住宅地を走る世田谷線
豪徳寺
国指定史跡の豪徳寺井伊家墓所のほか、仏殿、梵鐘など、井伊家ゆかりの文化遺産など、見所の多い古刹。風格のある本堂は、昭和42年(1967)に造営されたものです。
山門の扁額に書かれた「碧雲関(へきうんかん)」は、「外の世界と境内を隔てるために建てられた門」を意味するといわれています。
大小さまざまな招福猫児が並んでいる招福殿横の招福猫児奉納所
世田谷城阯公園
昭和15年(1940)に開園した世田谷区内唯一の歴史公園。東京都指定文化財で世田谷百景にも選ばれています。
世田谷城阯公園
松陰神社
伊藤博文をはじめ、明治維新で活躍した数多くの逸材を育てた教育者・吉田松陰を奉る神社。安政の大獄で処刑された吉田松陰を弟子たちが長州藩の下屋敷のあったこの地に埋葬し、明治15年(1882)に墓畔に社を築き魂の鎮座する所となりました。
松下村塾
山口県萩市の松陰神社境内に保存されている松下村塾を模したものです。
吉田松陰座像
キャロットタワー
三軒茶屋駅
ゴールは、三軒茶屋駅。隣接するキャロットタワー26階の展望台からは世田谷線が走る街並みを一望できます。
酒井政人(さかい・まさと)
スポーツライター。1977年、愛知県生まれ。東京農業大学1年時に箱根駅伝10区出場。その経験を生かして、現在は『Number WEB』『PRESIDENT Online』など様々なメディアに寄稿中。またランニングクラブも主催している。著書に『箱根駅伝は誰のものか』(平凡社新書)、『ナイキシューズ革命 “厚底”が世界にかけた魔法』(ポプラ社)など。