毎回、ゲストの方に
これまで歩いてきた道(人生)、
これから歩いてみたい道について
語っていただきます。
中村蒼さん
15歳で寺山修司原作の舞台「田園に死す」で主演デビューし、これまでに様々な舞台やドラマに出演してきた中村蒼さん。昨年はNHK連続テレビ小説「エール」で村野鉄男役を演じ、話題となりました。30歳という節目の年を迎えた今年、多くの話題作に出演。12月放送のNHK土曜ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」でも、その独特の存在感を放っています。
小さい頃の僕は、母によると、数時間前に食べた晩御飯のことも忘れちゃうような、いつもボ〜ッとしている、良く言えば穏やかな子だったようです。いつも3つ上のしっかり者の姉にくっついて、姉が好きなテレビを観たり、姉の友だちとも一緒に遊んでいました。小学生になって、サッカークラブに入ってからは、クラブの友だちと休日に遊ぶようになり、少しは活発になったのですが、クラブの中で全て完結。そこを飛び出して新しいことをやる、という意欲が湧いてくる子ではなかったんです。
僕が芸能界に入るきっかけは、父が雑誌のオーディションに応募してくれたからです。当時、中学生でしたが、これといった将来の夢もなく、今の生活が楽しければいい、という感じでした。父は、半分親バカ的な気持ちもあり、この子はこれから進学、就職というよりも、芸能界に入る道が良いかもしれない、と思ったようです。人前で話すのは苦手だったのですが、あれよあれよという間にオーディションの最終選考まで残り、賞をいただきました。
2006年に「田園に死す」という舞台で主演デビューさせていただきました。東京にウィークリーマンションを借りて、2カ月ほど稽古をし本番に臨みました。15歳の僕にとって「舞台って怖い」というイメージでしたが、演出家の方や出演者の皆さんに手取り足取り教えていただきました。何かを始めようとする時に、最初に誰に出会い指導してもらったかが大事だと思うんです。僕はこの舞台に関わった方たちに芸能界へのいい道筋を作っていただき、本当に恵まれたスタートを切れました。福岡から1年間通い、その後上京しました。東京に行くからには、本格的に腰を据えてやらなければ、と自らを追い込むことで、何かが吹っ切れて、一生懸命にやろうという気持ちが、少しずつですが芽生えていきました。
12月に放送のNHK土曜ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」では、主人公の女性騎手を育てる調教師役で出演します。女性騎手からは「先生、〇〇を教えてください」と頼られるのですが、これまで「先生」と呼ばれるような役をあまりやったことがなかったので、とても新鮮な気持ちで撮影しています。いくつになっても人生を再生することができるという、とても勇気づけられる作品です。
役者生活も15年目に入り今年30歳になりました。様々な作品に出演させていただく中で、色々な出会いがあり、その都度、刺激を受けてきました。映像も舞台もいつもゼロからスタートしているような感じがあり、毎回、初舞台、初映像という感覚でドキドキの繰り返しですね。役柄については知識を入れ込んで追求していくタイプではなく、この役はこういう人と決めて演じるよりは、この人にもこんな部分があるということを表現したいし、それのほうが楽しい。人間には色々な顔があるから面白いわけですから。芝居は他の人と一緒に作っていくものなので、相手がセリフをどう言いやすくできるのか、一緒に芝居をする人のために芝居をしたい。そうすれば作品はよくなっていくだろうと思っています。だから僕は役というよりは作品自体に向き合っているところがあります。これから年を重ね、その中で役者としてどう生き残っていくのかを考えると、オリジナリティ、個性が求められるはずです。「この役はあなたでないと」と求められるような役者になれるように、30代も頑張っていきたいです。
歩くのが好きで1時間ぐらいは平気で歩いちゃいます。仕事の行き帰りも歩ける範囲か検索し、目的地の数駅手前で降りて歩くこともあります。歩くことは健康にも良いので、僕にとっては手軽な健康法でもあります。その時はiPhoneで、主に芸人さんのAMラジオ番組や、日本のヒップホップを聴いています。歩くことが、一人になれる癒しの時間にもなっています。
なかむら・あおい
2006年、寺山修司原作による舞台「田園に死す」で主演デビュー。近年の主な出演作に、ドラマ「赤ひげ」シリーズ('17・19/NHK BSプレミアム)、「命売ります」('18/BS ジャパン)、「悪魔が来りて笛を吹く」('18/NHK BSプレミアム)、「詐欺の子」('19/NHK)、「浮世の画家」('19/NHK)、「エール」('20/NHK)、「神様のカルテ」('21/テレビ 東京ドラマスペシャル)、「ネメシス」('21/NTV)など。映画「空飛ぶタイヤ」('18)、「もみの家」('20)など。舞台「OTHER DESERT CITIES」('17 熊林弘高演出)、「ふたり 舞台「悪人」」('18 合津直枝演出)、「お気に召すまま」('19 熊林弘高演出)、「忘れてもらえないの歌」('19 福原充則演出)、「MISHIMA2020 班女」('20 熊林弘高演出)、「君子無朋」('21東憲司演出)など。12月18日・25日放送のNHK土曜ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」に出演。