毎回、ゲストの方に
これまで歩いてきた道(人生)、
これから歩いてみたい道について
語っていただきます。
高橋陽一さん
世界中のスター選手やサッカーを愛する子どもたちの憧れの存在は、サッカー漫画『キャプテン翼』に登場する大空翼。高橋陽一先生によって生み出された主人公・大空翼が、夢に向かって突き進む姿は、読者に力を与えています。
絵を描くのが小さい時から好きでした。幼稚園の頃は見たものを地面や画用紙に描いていました。小学生になると『巨人の星』や『あしたのジョー』などスポーツ漫画を夢中になって読みました。漫画を描くようになったのは5、6年生頃からです。最初は、好きな作家さんの物マネでコマの切り方など勉強していました。見せ方によって迫力が変わってくることもわかってきました。野球が好きで、中でも水島新司先生の『ドカベン』の大ファンで熱中して読みました。一番影響を受けたと思います。その頃から漠然と将来は画家やイラストレーターなど、絵を描くことを仕事にしたいと思うようになりました。漫画が好きになってからは〝漫画家になりたい〟という思いが強くなりました。高校受験が終わった中学3年の春休みに1本描いて、初めて投稿しましたが、全く賞には入りませんでした。
『キャプテン翼』で漫画家デビューしたのは、20歳の時でした。Jリーグが発足する前で、まだサッカーは日本ではマイナースポーツでした。好きだった野球ではなくサッカーをテーマにしたのは、高校生の時に観たアルゼンチンワールドカップ(1978 FIFAワールドカップ)がきっかけとなりました。当然日本は出ていなかったのですが、個人技が主体でプレーする南米スタイルのサッカーを観て、単純にサッカーというスポーツを楽しめたのが、一番大きいですね。その大会で、マリオ・ケンペスという、アルゼンチンの選手を好きになりました。サッカーは基本的に、手さえ使わなければ何をしてもいいというスポーツだと思います。発想が自由で、自分が思ってもいないプレーが次の瞬間に生まれたりもする。野球とはまた違う感動がサッカーにはあったので、そこに惹かれたのだと思います。
2020パラリンピックを目指す『ブラサカブラボー!!』を描いたのも、ブラインドサッカーを観戦して、目の見えない人たちの凄いプレーに驚き、感動したからです。健常者と障害者が一緒になって戦うスポーツで、ゴールキーパーは、健常者。コーチも声を出してアドバイスをする。その構図が現代社会の中に必要なことで、それをブラインドサッカーが表現している気がしたんです。目の見えない選手は耳を頼りにプレーするので、応援は声を出さない。その分、ゴールが決まった瞬間、静寂な空間が一気に歓声で沸きあがります。選手もそれを楽しみにプレーをしている。そこが観ていて楽しいところだと思います。
翼は僕自身の分身であり子どものような存在でもあります。だからやりたいことを翼にやらせています。僕も子どもの頃は、プロ野球選手に憧れていたんですけど、自分はなれなかったので、漫画の中で自分が描くキャラクターが僕の代わりにスーパープレーをしている感じはありますね。現実ではできないようなプレーも漫画の中では表現できます。『キャプテン翼』は、「夢を持って頑張ろう」ということを根本のテーマとして描いているつもりです。読んでくださっている皆さんにもそれぞれの夢を見つけて、それに向かって頑張ってほしいし、そうしたやる気を呼び起こせるような漫画でありたいと思っています。
パデルとフットゴルフにはまっています。パデルは、テニスとスカッシュを合わせたような競技で、周囲を強化ガラスと金網で仕切られたコートで、テニスラケットより、ちょっと小さなラケットを使いダブルスでプレーします。フットゴルフはゴルフ場で、サッカーボールを蹴って18ホール回ります。両方とも、かなり体力を使うスポーツですが、これから盛り上げていきたいと思っています。
たかはし・よういち
東京都葛飾区生まれ。1980年、『キャプテン翼』(集英社)でデビュー。1983年にはアニメ化。同作品は日本でのサッカー人気はもとより、世界のサッカーの普及・発展に大きく貢献し、数多くの海外サッカー選手たちへも影響を与えた。現在でも世界中で愛され続けるグローバルコンテンツとなっている。現在、「キャプテン翼マガジン」にて『キャプテン翼 ライジングサン』を連載中。2017年6月にはシリーズ通巻100巻を達成、2018年にはアニメ最新作の放送が開始され、海外でも順次放送されている。葛飾区に実在するサッカーチーム「南葛SC」の代表を務めるなど、漫画家以外の活動も積極的に行っている。