毎回、ゲストの方に
これまで歩いてきた道(人生)、
これから歩いてみたい道について
語っていただきます
横山だいすけさん
NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』の歌のお兄さんを歴代最長の9年間務めた、横山だいすけさん。今も「だいすけお兄さん」の愛称で親しまれ、その優しい笑顔と爽やかな歌声は、子どもから大人まで幅広い層の人たちに 支持されています。
とにかく歌が好きで、3、4歳頃からどこにいても歌っていたみたいです。そのきっかけはウィーン少年合唱団の寮生活を描いたディズニー映画『青きドナウ』。それを観た時に、おとなしくて恥ずかしがり屋の僕が「僕は目も青くないし、髪も金色じゃないけどこの人たちと一緒に歌いたい」と言って親をびっくりさせたようです。歌のお兄さんになってから、子どもたちに「何でもやってみよう!一歩踏み出してみよう」と言っていましたが、僕自身が昔は恥ずかしがり屋で中々一歩が踏み出せない子どもだったんです。
小学校3年生から大学を卒業するまで合唱を続けてきました。僕が「歌のお兄さんになりたい」と思ったきっかけは、高校2年生の時に読んだ資料です。そこに「音楽は人の心を豊かにするものだからこそ、沢山の音楽を届けることが、その子の一生の心の豊かさに繋がっていく」ということが書かれていて、僕の歌を通して子どもたちに音楽の楽しさを届けられたら幸せだなと感じたのです。そして大学生の時に10代目の歌のお兄さんだった今井ゆうぞうさんが劇団四季出身であるという記事を見て、ミュージカルに興味を持ち「ライオンキング」を観に行きました。その時、子どもたちが目を輝かせて食い入るように舞台を観ている姿を見て、自分の人生の中で歌うこと、音楽をする目的は、子どもたちに音楽を届けること、そのために何をすべきかが見えてきたんです。そして大学卒業後に劇団四季に入団しました。
2008年に、念願が叶って11代目の歌のお兄さんになることができました。卒業するまでの9年間には、沢山の思い出があります。目をキラキラ輝かせて楽しんでくれる子もいれば不安で泣いちゃう子もいました。番組は25分ですが、収録が終わるまでの約1時間が、お兄さんやお姉さんが子どもたちと関わっている時間。だからその1時間を素敵な時間にできるかどうかが毎回チャレンジでした。子どもたちは知っている歌は大きな声で歌い、知らない歌は真似をして一生懸命に歌ってくれる。その姿にいつも感動しました。お兄さんになりたての頃は、子どもたちの模範になることばかり考えていました。でも僕自身が思いっきりその場を楽しむことが何よりも大事だと思うようになり、それを伝えたいと意識するようになっていきました。
番組を卒業してからも「だいすけお兄さん」という存在が誰かの背中を支えたり元気づけたりする活動をしていきたいと思っていました。ですからNHK「アニ×パラ」パラ卓球編のテーマ曲「もったいない青春」のお話をいただいた時は嬉しかったです。僕はパラスポーツに詳しくなかったので、僕のような人たちに興味を持ってもらえるような前向きな歌にしたいなと思いました。この企画では、僕の原点でもある合唱をNHK東京児童合唱団のみなさんと一緒に手話もしました。手話は同じ言葉でも歌詞に合わせて表現方法を変えるので、頭の中でイメージをすり合わせて歌詞の柔らかさをどうやって表現するかが新しい挑戦でした。これからも自分自身に制限をかけるのではなく、あらゆることをやってみたいです。上手くいくこともあればいかないことも沢山あると思います。でも誰かが僕を見てくれた時に、歌のお兄さんを卒業しても「だいすけお兄さんがこんなことをしている、あんなことをやっている。お兄さんが頑張っているから私も新しいこと頑張ってみようか」と思ってもらえたら幸せです。僕の姿を通して何か前向きな気持ちを届けられることが喜びなのだと実感しています。
昔から生姜やレンコンなど、喉にいい食材をいっぱい入れたスープを作るのが好きでした。今はコロナ禍で家にいる時間が多いので料理にハマっています。お気に入りの食材はサバ。震災の復興支援で食べた金華サバがとにかく美味しかった。サバはちょっと癖があるのでトマトと一緒に焼いたり、野菜炒めやカレー……、チャレンジャーなのでレシピを見ながらサバ缶を使ったグラタンにも挑戦。失敗もありますがそれもまた楽しんでいます。
よこやま・だいすけ
2006年に国立音楽大学音楽学部声楽学科を卒業。劇団四季時代は「ライオンキング」等の舞台に出演。 NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』では、番組史上歴代最長となる9年間“歌のお兄さん”を務める。卒業後は、ドラマや声優、CM、舞台など活躍の場を広げている。2019年にはソロアーティストとして初のオリジナルアルバム「歌袋」をリリース。2021年はNHK「アニ×パラ」第12弾のテーマソングを担当。