No.83
2026 SPRING

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「TR-mag」83号「TOKYO今昔物語」

変化し続けるまち、東京。毎回注目エリアをピックアップし、昔と今を定点観測的に比較。
「都市計画」の研究者・中島直人教授に、歴史や地形と紐づけて解説していただきます。

【上】東京オリンピックが開催された1964年。当時から西口はバスターミナルとして賑わっていた。小田急本館はまだなく、東口まで見通すことができる。五輪終了後の12月から、西口開発工事が着工されることとなる。(新宿歴史博物館所蔵)

【下】小田急百貨店が解体されたため、今は東口まで見渡せる。二層になった駅前広場の中央を縦断する道路は、小田急跡地の構台につながる工事用仮設スロープ。(工学院大学新宿キャンパスより撮影)

@ │ 完成予定は2040年代の大工事!新宿駅西口

車中心から歩行者優先のまちへ未来を見据えてリブート中

 新宿駅が60年ぶりの更新期を迎え、大きく姿を変えようとしている。クレーンが並ぶ今の新宿駅西口広場の写真はまさに「工事中景」である。駅とまちを結ぶ動線も工事の進捗にあわせて随時変更されていく。ところで、60年ぶりということは、半世紀ほど前にも同じような大改造を経験したということである。そのことを教えてくれるのがもう一枚の写真。噴水のある三角形の広場を中心にバスが並ぶ。今よりもだいぶ広々としている。西口にはまだ駅ビルはないが、「新宿西口駅本屋ビル建設工事」の看板が確認できる。のちに小田急百貨店本館となり、現在、建て替え中のこのビルの着工は1964年12月、ここから約半世紀前の大改造が始まった。

 高度経済成長期まっただなかの駅前広場の大改造は、淀橋浄水場の移転跡地での超高層ビル街建設=新宿副都心計画の一環であり、増大する一方の自動車需要に対応する必要があった。解決策は、地下―地上の二層構造の駅前広場への改造。広場の真ん中には大きな穴が開けられ、らせん状の斜路が地下と地上を繫いだ。地下の改札を出て天井の低い通路を抜けると、空から光が差し込んでくる、あの体験はこの時、生まれた。二層構造は駅前広場だけに留まらなかった。駅前広場から超高層ビル街、新宿中央公園へ向かう4号街路(都道新宿副都心4号線)もまた、最初の300mは二層構造となっている。「動く歩道」がある地下道を行くと、超高層ビルたちの姿が見えたところで地上に出てしまう。ここから先はもともと浄水場の貯水池があった場所。池の地形をそのまま生かし、池の底部のレベルを高層ビル街の中心軸の地上レベルとした。そして二層構造の4号街路の地下道や駅前広場の地下のレベルも、この池の底部と同じに揃えたのだ。

 現在進行中の2度目の大改造でも、浄水場の記憶を引き継ぐ二層構造は変わらない。だが、車のための交通広場は歩行者が滞留できる人のための広場へと大きく変わる。穴は残り、光は注ぎ続ける。4号街路は地下も地上も歩行者優先の、ウォーカブルな「西新宿グランドモール」に生まれ変わる予定だ。「工事中景」の先の未来のまち、みち、広々としたひろばへの期待が膨らむ。

中島直人写真

PROFILE
中島直人
なかじま・なおと●1976年生まれ、東京都出身。東京大学大学院 工学系研究科都市工学専攻教授。専門は都市計画。主な著書に『アーバニスト』(共著、ちくま新書)、『都市計画家の100年』(東京大学出版会)などがある。

TR-mag vol.83

【表紙・背表紙】撮影/前 康輔
【背表紙】Licensed by TOKYO TOWER

What's TR-mag.?

「TR」は公社が取り組む事業の総称であり、「T」は「Tokyo(東京都)」・「Town(タウン)」を、「R」は「Road(ロード)」を象徴しています。そんな公社の使命や存在意義を、幅広い世代のみなさんに理解していただくため、都内の道をキーワードに様々な情報を盛り込み、平成17年から発行している公社発行の機関誌です。